山ナース日記 ~Vol.7 秋の学校遠足同行~

山ナース

地域:日本有数の米所
日程:2018年10月始め

東京都内の区立中学校1年生が2泊3日で行う自然教室に、看護師として同行してきました。
今回の自然教室の目的は、豊かな自然の中での様々な体験を通して自分達もまた自然の一部であるという「自然との共生」を学ぶこと。そして、その活動を通して仲間との絆を深め豊かな社会性を身につけることです。

では、どんな自然体験をするかと言うと、オリエンテーリング、稲刈り、飯盒炊飯、魚を掴み取りし、自分で焼いて食べるという都会に住む生徒にとってはサバイバルと言ってもいいような体験です。

しかし「ワー!ワー!!」「キャー♪キャー♪♪」叫びながらも、一生懸命行っていて誰一人として「やらない」と言い出す子はおらず、苦手な生徒には得意な生徒がフォローしてあげていたので、とても感心しました。こういった行動を通して、今回の目的でもある絆を深めることになるのでしょう。

特に飯盒炊爨(はんごうすいさん)は、薪で火をおこし、飯盒でご飯を炊き、カレーを作って食べるという大人でも難易度の高いミッション。
ほとんどの生徒にとって、生まれて初めての体験を仲間と協力して作りました。出来上がったカレーライスを、全員で草の上に座って食べると、驚くほど美味しかったです。

大人数で自然の中で食事を作って食べていると、山行を思い出してきます。
しかし、近年の登山界では同じパーティであっても、全員が個別に料理をしてソロテントで寝るという若い登山者が増えていると聞きます。「同じ釜の飯を食べ、同じテントで寝る」ということが当たり前ではなくなってきています。
目の前でカレーライスをワイワイと仲良く食べている中学生たちが登山をするようになった時に、どのような山行形態になっているのだろうかと、考えてしまいました。

今回の自然教室は生徒たちにとって人生の思い出となる良い経験になりましたが、これだけのサバイバル体験ですので、もちろん怪我はつきものでした。
具体的には・・・
・魚の串刺しで手を刺創
・飯盒炊爨での熱傷(やけど)
・オリエンテーリングでの転倒・転落による打撲
・宿舎風呂場で転倒し出血(裂創)
・稲刈りのカマで切創
すべて大事には至らなかったものの、考えられる怪我のほとんどを生徒たちは、やらかしてくれました。

では、野外でのケガ(外傷)の処置として行うこととは、どんなことでしょうか?
1、先ずは止血
ケガをして出血が続くようでしたら傷をキレイなガーゼや布で圧迫して止血します。ポイントは必ず手袋やビニール袋などを使って血液が手に着かないようにすることです。その方が躊躇なく、しっかり圧迫し止血することが出来ます。

2、次に洗浄
今回の遠足では大きなケガはなかったものの、とても役に立ったのが洗浄水でした。川の水で泥などを落とし見た目はキレイになっても、最後に洗浄水で洗います。
洗浄水は特別な液体を用意する必要はなく、水道水でOKです。
私は小さいペットボトルに水道水を入れて持って行きますが、穴をあけたペットボトルのキャップをもう一つ用意しておきます。洗浄が必要なときに穴あきキャップに変えて「ピューッ!」と勢いよく水を出して傷口を洗います。

洗浄する際のポイントは、水圧をかけて洗うことです。水をただ流して洗うより洗浄力が増します。泥などの付着物が残ると感染の危険性が高まるので、洗浄は重要です。キレイに洗浄できていれば消毒をしなくても問題ありません。むしろ野外では消毒より洗浄を優先させてください。穴を開けたペットボトルのキャップだけを持っていれば、水のペットボトルに装着して使えるので、いざという時に役立つので、ぜひ用意してほしいです。

その他、今回は時期的にハチやヘビに備えてポイズンリムーバー(毒を吸い出す器具)も持参しました。ポイズンリムーバーを使用する事象の場合は、緊急性が高いため、すぐに取り出せるようにしておきます。ポイズンリムーバーがなければ刺されたところを手でつまんで絞り出します。

傷口の吸引後は、洗浄・消毒をして、ヘビに噛まれた場合は医療機関に直行、ハチに刺された場合でも、吐き気やジンマシンなど全身性の症状が出たら医療機関へ急ぎましょう。

山や野外での活動は、危険なことも多くあります。そういった危険を回避する術も含めて、自然は人間に多くの経験と成長を与えてくれます。今回の自然教室に同行して、人と人、人と自然のつながりの大切さを気付かされました。

小林 美智子