【山遊び♪レポ】北岳バットレス第四尾根 ~日本で2番目に高い山でマルチピッチクライミング~

山ナース

時期:2021年10月
報告:ホームページ管理担当Mu

こんにちは!ホームページ管理担当のMuです。
10月になっても台風が発生していて、天気予報にはハラハラさせられますね。
ちょうどお休みのタイミングで比較的天気が良かったので、何年も前からの課題だった北岳バットレスを登ってきたので投稿します。

北岳は日本で2番目に高い山
日本一高い山は富士山って知られていますが、2番目はと聞かれると登山をしない人は知らない人が多いです。
日本で2番目に高い山「北岳」は南アルプスの北側にあり、東京と大阪を結ぶリニアモーターカーがあの辺りをトンネルで通過する予定です。

北岳バットレス第四尾根
バットレスって元々は建築用語のようですが、山頂を含む稜線から直角に突き出た壁という説明で分かるでしょうか?
ちょうど、北岳の登山口である広河原から北岳を見ると、正面に何本も突き出た岩壁があるのが分かりますか、今回は、4本目の尾根をクライミングで登り北岳に登頂する予定です。

全て背負って!
広河原を6時半に出発!
ロープ2本、クライミングシューズ、ギア類に泊まり装備を背負った私たちは、途中どんどんと登山者に抜かれます。
それでも白根御池小屋にはコースタイムよりも早い2時間ほどで到着。

クライミングルートの渋滞によっては、クライミング中のビバークも想定されるので、ここで目一杯給水して再出発!

登山道を外れ岩場へ
八本歯のコルへと向かう登山道の途中でバットレスが「ド~ン!」と正面に見えたら登山道を外れて岩場に向かいます。

登山道では無いですが比較的歩きやすいです。

でもガレ場があり落石を起こさずに、自分もずり落ちないように気を付けながら、どんどん大きくなり急角度になっていく岩場にドキドキしながら登ります。

いきなりルートファインディングミス!
今回の目的ルート北岳バットレス第四尾根という岩場に上がる前には下部岩壁という岩場が待ち構えています。

事前に写真でチラッと見たので「ここだろう!」と思ったルートがまさかのミス!

誰も登らないような岩溝にパートナーのKOさんを送りだしてしまい、1時間近く悪戦苦闘して突破!

エースを温存するために・・・
この先の岩場では、約10ピッチ(50mロープ1回分を1ピッチ)ほどのクライミングを行う予定です。

その中には何か所か難しいピッチがあり、そこはエースのKOさんにお願いしたいところ(何という他力本願・・・)

しかし、KOさんが既に消耗気味なのと日没まで時間の余裕もなくなってきたので、「頑張らないと!」と気持ちにムチを入れて、出来るだけやさしいところは先頭(リード)を私が登ります(^^;)

予報どおりのキリで視界不良
ガイド本では、初級者向けのルートということと、天気予報どおりにガスに囲まれて高度感を感じ難くなったことで、怖さが薄れたのか私も多くのピッチをリードできました。

ただ、初めてのルートでガスに覆われてしまうと、ルートが分からなくなるというリスクがあります。そこは幸いに尾根に取り付いていたので、困ることはなかったです。

懸垂下降もあり
ルート途中には懸垂下降もあります。

何度やっていても、ミスをしたら重大な事故となるのでセットを間違えないよう2人で確認します。

それにしても、写真を見るとザックの大きさがよく分かります。
クライミングをするザックの大きさじゃあないですね。。。

もう2度と来たくない!?
北岳バットレスは、過去に何度か大崩壊をしているため「北岳バットレスは登らない」と決めているクライマーも多くいます。
私も崩壊部の脇を通過した際に「次に崩れるのは、掴んでいるこの岩だ・・・」と考えてしまいました。
それくらい大きく、はるか下まで崩壊していました。
この先、クライミングが上手になっても、気軽には来たくないなって思いました。

日没が迫る中、満身創痍のクライミング
ガスに覆われているので、日の入時間よりも早くに暗くなってきました。

ここまで来たら、何とか岩場を脱出してからビバークしたいと2人とも言葉にはしませんでしたが、行動に現れているので、自分の役割を素早くこなします。
しかし、最後のピッチはラスボスに相応しい難易度で、エースKOさんが荷物なし、ヘッデン点灯で何とか突破しました。素晴らしい!
あとは、私とKOさんの荷物を脱出させれば、ミッションは終わったも同然です。
しかし、狭い岩場を2個のザックと私が通過するのに大苦戦。
ザックは岩に引っ掛かり真っ直ぐにKOさんの元へと戻らないので、私が自分の荷物を背負って途中まで登り、KOさんの荷物を引き上げて・・・
を繰り返しますが、重いザックを持ち上げる腕力が無くなってきます。
KOさんから確保してもらっているので落ちないとはいえハング気味の部分では、岩場にくっついているためにも脚力や腕力が消耗するので、最後は体力がギリギリとなり冷静でなかったです。
しかし、人間は面白いもので、そんな時でも「テンションお願いします。」とか「ロープを張って下さい。」というように普段以上に丁寧な言葉遣いでした。
パニック状態だったのは明らかなのですが、そういった事を覚えているのは冷静だったのでしょうか???

真っ暗闇の中の登頂
薄暗い中、何とかクライミングルートをクリアしたので、装備を外してザックに詰めて山頂へと歩きます。
暗くなったので慎重に歩いている風ですが、疲労により早く歩けない状態だったので、ちょうど良かったのかも知れません(^_^)。
無事に山頂に着いたのは18時を過ぎていました。

ここから、ビバーク適地を探しつつ、ヘッデンで足元を照らして慎重に下りていきます。
1時間以上歩いたでしょうか、ハイマツに囲まれた狭く若干傾斜したスペースを見つけ、ツエルトを設営し、寝たのが20時半・・・14時間行動でした。

快晴の中、超速下山
翌朝は下山するだけなので明るくなってから起きましたが、未明から強風にツエルトが崩壊寸前だし、傾斜により足先が外に出ていたので、冷え込まなくて助かりました。
先日終了した基本登山技術講習会「初級編」では、参加の皆さんが山中でツエルト設営を実践しましたけど、皆さん短時間で寝心地が良さそうな位置にツエルトを設営していました。
まだまだ私も経験不足です💦

外に出てみると素晴らしい眺望、「イヤー、ヨカッタ♪」と2人で話して、素早く撤収して下山。

駆け下るように2時間ちょっとで下りたので、翌日は珍しく太腿の付け根が筋肉痛になりました。

ロープワークは冷静に・・・
途中でも書きましたが、自然の中では自分の立てた計画どおりに行かないことがあると思います。
また、誰かの記録のとおりに体験をなぞっても面白みに欠けるし、その人と全く同じ状況は有り得ません。
でも、それが楽しさの1つだと思って冷静に自分の経験や知識をフルに使って対応することが大切だと思います。
特にロープワークは、ロープを使用している時点で危険地帯なわけですから困難な状況でも間違いのないように使用することが重要です。
そのためには、繰り返しロープワークをすることだと思います。

小林美智子山岳看護師事務所のロープワーク講習会は、冬期を中心に少人数制で行っているため既に11月と12月は定員となっています。
現在、1月と2月はまだ余裕がありますので、ロープワークに興味のある方は、ぜひこの機会にご参加ください。

現在募集中の講習会・ガイドプランは、ここをクリックしてご確認ください。