【山ナース日記】vol.175 2022富士山五合目救護所活動「後半」

山ナース

今年は梅雨明けが早く、長い夏山シーズンだったお山も、お盆を過ぎるとすっかり秋めいてきます。
行動制限のない今年の夏、富士山でも多くの登山者が訪れましたが、2022の富士登山は救助要請が多発しました。
☟富士山五合目は、8月中ですが早くも秋の気配。

もちろんケガや発病など本当に救助が必要なものもありますが、
「水も食べ物も持っていない」、「暗くなってしまったけどヘッドランプがない」、「疲れて歩けない」などの通報も多く、同じパーティーでも、疲れた人や足の弱い人を置いて行ってしまう案件が散見されました。

特に夜通し弾丸登山で、睡魔と疲労でフラフラした揚げ句に転倒してのケガの救助要請が多発しました。
その中には「下りで足先が痛くて歩けないから、ヘリコプター呼んでほしい。山岳保険に入ってるからヘリコプター呼べるはずだ」というビックリするような救助要請もありました。
☟こんなガスガス(霧で視界不良)でも多くの登山者がいます。

そして、今年多かったのが心肺停止案件でした。
2022年は、4件の心肺停止が発生し、1件は奇跡的に蘇生出来ましたが、その他は残念ながら蘇生できませんでした。
心肺停止になってしまった方はグループ登山や単独登山そしてツアー登山とそれぞれですが、楽しいはずの富士登山が悲しい登山になってしまうのは避けたいものです。
心臓病の既往のある方はもちろん、糖尿病や高血圧も心臓突然死の危険がありますので、かかりつけの病院で普通の心電図検査ではなく運動負荷をかけた心電図の検査などをお勧めいたします。

長野県の松本駅のすぐそばの松本協立病院に登山者専門「登山者検診」があります。
登山者検診を受診して、自分の中にあるリスクを把握し、国際山岳医(市川智英先生)によるアドバイスもいただけますのでぜひ活用してみてはいかがでしょうか?
☟五合目のAED、当然ですが登山道にはAEDはありません。

富士登山は五合目までバスで行くことができるので、観光の延長として「簡単に登れる」「頑張れば登れる」「気力で登れる」というイメージがあるかもしれませんが、
「富士山は、根性だけで登れるほど甘くはない」
普段の生活で15分も歩かない方が、山を10時間歩くことを想像してみてください。
富士山は標高が高い(日本一)うえに、気象条件も想像以上に厳しいので、いきなり富士山に登るのは無謀です。

富士山の前に必ず他の山に登山をして、装備も万全、カラダも万全にして富士登山に挑戦していただきたいと思います。
そして、富士山では3人に1人はかかる高山病、高山病の知識もなく登るのも危険です。
バスで5合目に到着後は高所に体を慣らすために1~2時間はゆっくり滞在しましょう。
登山中は水分をしっかりとり、ゆっくり登る。
頭痛・吐き気・めまいなどの高山病症状が現れたら、休んで深呼吸、症状が改善されなければ標高を下げましょう。

☝登頂にこだわらずに。五合目でも素晴らしい眺めです。

富士山五合目は、標高約2300mですが、🦋ちょうちょうがいっぱいいますので、ちょっとご紹介

【キベリタテハ】
羽根を縦にするタテハチョウの中で、羽根のふちが黄色いのでその名がついたそうです。

【アサギマダラ】
鬼滅の刃の胡蝶さんの蝶として有名になった蝶で、長距離を移動する渡り蝶です。
標高の高い山地に多く生息しており、ヒマラヤ山脈まで分布している。
移動の研究がされているので、ときどきマーキングされた個体がいることがあります。

私の2022富士山五合目救護所の最終勤務日(8/31)のご来光は素晴らしかったです。
閉山(9/10)までの間、富士山での事故が起きないことを願っています。