山ナース日記 ~Vol.1 富士山五合目救護所~

山ナース

山域:富士山
日程:2018年7月

「富士は日本一の山」
そう、富士山はどの山とも違う!
富士山で救護所活動しているとよく分かります。

今まで登山したことがない人が、いきなり富士山を登りに来るのです。
大人も子供も高齢者も、日本のみならず世界中からも、日本一高い山、日本が誇る美しい山を目指して、大勢の人々がやってきます。

夏休みに入ったので、富士登山にチャレンジする子供達の姿も多く見られますが、救護所を訪れる子供も少なくありません。
その子供達の様子を看ると、ほとんどが高山病を起因とした脱水と疲労です。
話しを聞くと「弾丸登山ではなく、登山道途中の小屋に宿泊しましたが、吐き気と嘔吐で食事も水も摂れず、夜も眠れず、朝になり登頂は諦めて下山。」

そんな子供達が五合目救護所に来所してきます。
なんとか頑張って五合目まで下りてくると、標高を下げることで高山病の症状は軽快し(軽くなり)ますが、脱水と疲労は増悪(悪化)しています。

登りの登山で大量に発汗して体の水分が失われた状態なのに、高山病での嘔吐による水分の喪失と、吐き気により水分が摂れなくなり、脱水が増悪してしまうのです。
下山で嘔吐や吐き気がよくなっても、今度は不眠と疲労で水分を摂る気にもなれません。

そんな子供達には、経口補水液をコップで渡します。
「水分だから飲んでね」と言ってもなかなか飲んでくれません。
「これは良くなるお薬だから、飲んでね」と言うと、イヤイヤでもなんとか飲んでくれます。

きちんと口から飲めて(飲んだ量を必ず確認)、飲んでも吐いたり気持ち悪くなったりしなければ、一安心です。
子供は大人に比べ、体重に占める水分量が多いので、特に注意しなくてはなりません。
子供だから飲む量が少なくてよいわけではないのです。

夏休み、登山を親子や家族で楽しまれていると思います。
大人は子供に「飲んでね」と言うだけではダメです。必ず確実に飲んでいるかチェックしてあげてください。
飲めなくなったら、すぐに脱水になる危険性があるという事を、念頭においてお子さんとの登山を楽しんでください。
小林美智子