山ナース日記 ~Vol.4 富士山五合目の登山者を看て思うこと~

山ナース

山域:富士山 五合目救護所
日程:2018.8月

富士山五合目救護所は富士山五合目総合管理センターの中に開所されており、救護所が平穏な時は、センターの前で登山者の皆さんに声掛けしています。今日は、富士山の登山者を見て感じたことを書きたいと思います。
まず、富士山は他の山とは「ちょっと違うな」と思います。一番、違うと感じるのは「外国人登山者が多い」こと。最近は、北アルプスでも外国人の方を多く見かけますが、富士山では、肌の色も話す言葉も、服装も様々で「ここはいったいどこの国なの?」と思います。そして次に感じるのは「登山装備の違い」です。

「外国人登山者が多い」中、救護所ではどのような事があったか紹介しましょう。
ランニングパンツ姿のオーストラリアガールが、下山中に滑って怪我をしたと救護所に来ました。お尻を見事に擦りむいていましたが、この格好で3776mに登頂したというのですから、日本人と欧米人の寒さに対する感度の違いがある。ということには否めません。


前夜にシャワーを浴びた際に耳に水が入ったから抜いて欲しいと、登山前に来所したアメリカの方。トントンしたり、自分で綿棒を使ってもらったりしましたが耳の違和感は変わらず…う〜ん困った(><)。アメリカでは耳に水が入ったら耳鼻科で抜いてもらう(人によると思いますが)そうで「このままだと不安だ」と言う。下の街まで降りないと耳鼻科は無いと話すと、諦めて登山に向かいましたが、元気に登頂して下山時に救護所に寄ってくれましたが、すでに耳の違和感は無くなっていました。高山病による脱水の疑いがあったベルギーキッズは、OS-1を飲んで貰った時は辛そうな表情でした。その後で「ホットチョコレート(ココア)を飲んでも大丈夫よ♪」と話した途端に満面の笑顔になりました。さすがGODIVAを代表とするチョコレート大国ですよね。私もキリマンジャロの最終キャンプで、頂上アタック前にどん兵衛のミニカップを食べた時は、とっても美味しくて元気が出たことを思い出します。

このように異文化の人達の常識は、日本とはやはり違うと思います。しかし、処置が終わって外に出て富士山を眺めると、その美しさと雄大さの前では「大したことではない」気がして、本当に山って凄いなあ、だから山に登るのかなあ、と感じます。皆さんは、どうでしょうか。

次に「登山装備の違い」についてです。先ほども書いたように、暑さ寒さに対する感度は個人差があるため、服装や装備はさまざまです。が、山岳看護師としては安全面から何よりも足元が気になります。富士山の登山者の靴は、他の山に比べてローカットが非常に多く見受けられます。


一生に一度の登山、または一年に一度の登山に、高い登山靴を用意出来なかったのでしょうか…。
どんどん大きくなる子供に、その時に合った靴を購入するのを躊躇したのでしょうか…。
海外から日本への旅行に重い登山靴を持って来られなかったのでしょうか…。


色々なことが想像されますが、救護所に来所した重症の足首捻挫(骨折の可能性がある方)は全てローカットシューズの登山者でした。ハイカットシューズの方も足首捻挫で来所しましたが、軽症で済み自力で帰れました。やはり足首をホールドしてくれるのと、そうでないのとでは、明らかに怪我の度合が違います。

最近は登山で使う靴も、アプローチシューズやトレランシューズなど多様化しているので、選ぶのにも迷ってしまう方もいるかと思います。
北アルプスではトレランシューズで登山されている健脚者も多く見受けられますので、それに伴って登山靴も、どんどん進化していくのかも知れません。
私が救護所で看ているかぎりの判断ですが、登山に慣れていない人は、しっかりとしたハイカットの靴をお勧めします。山での怪我は下山中に多く発生します。もう、足だけでなく身体中が疲れているので、バランスか悪くなるのは当然です。そんな時に助けてくれるのが、装備だと思います。
皆さんの靴は大丈夫ですか?自分を助けてくれる靴なら、安心して登山が出来ますよね。
小林 美智子