よくある質問コーナーQ&A

Q1【山岳看護師(山ナース)とは?】

山岳看護師というフレーズをはじめて耳にする人も多いと思います。
その名の通り山岳領域で医療活動をする看護師のことですが、
私と同じDiMM(DIPLOMA IN MOUNTAIN MEDICINE)取得者(通称:国際山岳看護師)は、
2019年現在、日本に10人しかいません。
その中で私は2018年から、日本初のプロの山岳看護師として活動を始めました。

DiMMは国際的な制度で、日本では2009年から日本登山医学会が主催していて、
UIAA Medcom(国際山岳連盟医療部会)
ISMM(国際登山医学会)
ICAR(国際山岳救助委員会)の認証をうけています。

今後、DiMM認定(国際山岳看護師)とは別に、
日本登山医学会独自の国内の山岳診療所・救護所を中心として活動する
医師・看護師向けの認定制度が新しく発足される予定ですので、
日本登山医学会のホームページを注視していただければと思います。

欧米では、山岳救助ヘリコプターに乗り込んで救助に向かう医療従事者が活躍していますが、
日本では様々な法律や状勢により欧米のような救助体制は出来ません。
そして山岳医や山岳看護師は警察や消防の山岳救助隊員ではありません。
しかし、日本の山岳の特徴や法律を厳守し、警察や消防の方々とともに、
日本独自の山岳救助医療体制を構築していくことが、現在求められています。

<冬季の山岳救助訓練の模様>

 

Q2【国際山岳看護師(DiMM取得)は、どうやったらなれるの?】

日本では日本登山医学会がDiMM(DIPLOMA IN MOUNTAIN MEDICINE)を主催しています。
(日本登山医学会ホームページ参照・・・クリックするとジャンプします。)

DiMMは山岳地帯で発生しうる疾病および外傷についての理論と対応実践について学び、
山岳医療の臨床および研究を実践できる医師および看護師および救急救命士の
養成を目的として実践するプログラム(合計121時間)です。

2020年度から新たに救急救命士も認定取得できるようになりましたが、
医師も看護師も救急救命士も同じプログラムと試験内容です。
そして、このプログラムはエントリ―から5年以内に修了することが義務付けられています。

認定を取得する際には、山岳医療のみならず登山技術や救助技術が求められます。
たとえば、沢登りや氷の壁を登るアイスクライミングなど、
夏だけにとどまらず冬山も含め年間を通じた総合的な登山技術、
救助技術としてロープワークの習得が必須です。
また、それらの技術を山岳領域で活かすために体力もなければなりませんので、
登山技術の検定の他にも体力テストもあります。

山岳領域では医師・看護師などの医療従事者だけで人は救えません。
山岳救助隊や山小屋、登山ガイド、そしてその場にいる登山者も含め、
みんなで力を合わせないと山では人の命を救うことはできないのです。
その際、われわれ医療者がコーディネート力を発揮する場面が多くあり、
山岳看護師として医療の知識や技術だけでなくコミュニケーション能力が大事だと気づかされます。

<山での傷病者搬送の指導中>

 

★DiMMコースでは、冬季の岩稜・雪稜・氷雪壁を登攀できること、またそれらを安全に、確実に登下降するためのロープワーク等を修得していることが前提となっています。

★現在、日本登山医学会では、DiMMコースとは別に、より山岳医療に特化した認定制度開始に向け準備をしている最中です。
昨今の諸処の事情により新制度の発表が遅れておりますが、近いうちに発表される予定です。

 

Q3【山岳看護師(山ナース)のお仕事って?

山ナースのお仕事としては、山岳診療所・救護所の医療活動、学校登山の引率、山岳スポーツ競技の救護班、
安全登山のための講習会、登山撮影隊への動向、海外登山ツアーや登山ツアーの同行などがあり、
山岳看護師の存在を知ってもらうことで、どんどん活動の場は広がっています。


<山ナース安全登山セミナーin大阪> 

そして、私は日本山岳ガイド協会の登山ガイドも取得し、登山に不安のある方への登山同行、
またお子さん・高齢者・障害者など、山では弱者といわれる人たちを山にご案内し、
世界を広げるお手伝いもしています。
もはや医師や看護師は病院にいるものという概念は常識ではなくなり、
これからは山にだって、海にだって、はたまた宇宙にも赴くことがあるかもしれません。


<富士山救護所前にて、幼稚園児の登山を見守る>

夏山シーズン、おもに山梨県富士山吉田口五合目救護所に勤務しています。
国内のみならず世界から多くの方が、日本が誇る美しい世界遺産である富士山に訪れますので、
傷病者の対応や安全登山の啓蒙活動も行っています。


<八ヶ岳 赤岳鉱泉での冬季山岳医療活動>

日本では冬季の山岳診療所が現時点では存在しない為、
冬季営業の山小屋で山岳医療活動を行ったりもしています。

まだまだ山岳医療活動はボランティア活動が多いですが、
山岳医療を普及させ、より必要な人に届けるために、山岳看護師が社会的に認められるために、
日本で初めてのプロの山岳看護師となりました。
仲間や多くの応援していただいている山を愛する方々に支えられ、地道に頑張っていきたいと思います。

 

 

Q4【山岳看護師(山ナース)を目指したきっかけ

山ナースをしていると学生時代から長く登山をしていると思われがちですが、私の登山歴は7年(2020年現在)と短いです。
しかし、登山を始めたころは病院勤めでしたが、山岳会に入会して休暇のほとんど(年間80日)は山に入り、クライミングや沢登り、雪山やアイスクライミングなどの多くの登山のジャンルに挑戦してきましたので、登山歴は少ないですがかなり濃い登山経験をしています。
さらに海外登山(キリマンジャロやマッターホルン)にも成功し、エベレスト登山を目指していました。

<キリマンジャロ山頂>


<マッターホルン山頂>

その頃、山岳会の先輩に国際山岳医がいて、「海外の山では、山専門の医師や看護師が活躍していて、日本でも御嶽山の噴火を機に必要とされ始めている」と、国際山岳看護師へのチャレンジを勧められていたのですが、山に夢中の私は本腰で取り組めずにいました。

そんな中、尊敬し目標にしていた日本を代表する女性登山家が、北海道の山で事故死してしまいました。
私は山が怖くなり、改めて自分の山とのかかわり方についてじっくり考えてみました。
そこで出した結論が、目指す山はエベレストではなく、山岳看護師として社会のニーズに応え、日本の新たな道を切り開いていくことだったのです。

もともと災害支援ナースとして、全国の被災地で災害看護を行ってきました。
災害看護に携わるきっかけも、東京都立病院での新米看護師のころの地下鉄サリン事件(1995年)がきっかけでした。
病院にあふれかえる患者さんたちを前に必死に対応した経験から、災害医療を勉強し災害支援ナースとして災害の現場に赴きました。

そんな経緯もあり、山岳医療を勉強していくにつれ、災害支援は有事(災害は起こってしまってから)活動ですが、山岳看護師は事故を未然に防ぐことができる、山での死を1件でも減らすことができると実感しました。
国際山岳看護師に続き、登山ガイド(ステージⅡ)資格も取得
忙しい病院での医療現場の中、休暇を利用しての山岳医療活動では限界も感じ、病院を退職して日本初の山岳看護師事務所を設立し、プロの山岳看護師として現在、奮闘しています。


<山中で救急法のレクチャー中>


<冬季山岳イベント救護>