山ナース日記~Vol.15里山の狩猟体験~

山ナース

場所:長野県松本市
時期:3月上旬

私は登山にのめり込む以前、「トライアル」というオートバイの競技をやっていました。
トライアルとは、オートバイでスピードではなくライダーの高度な技を競う合い、走破性と操縦技術の正確さを問う競技です。とってもクライミングに似ています(持論ですが)
そのトライアルの昔の仲間で長野県松本の堀金さん(ご夫婦ともバイクに乗ります)が狩猟生活をしているので、山岳看護師として山に関わることを勉強するために狩猟体験をさせてもらいました。
ご主人の堀金裕さん(以後ホリさん)はバイク仲間でもありますが、登山ガイドの先輩でもあるので、今回いろいろな事を教えてもらいました。

 
地元の猟友会に所属しているホリさん、狩猟免許を取得して公共団体に登録しています。
ワナは信州で考案されたカサマツ式という罠を使います。(なんと地元のホームセンターなどで売っているそうです)
農作物鳥獣害被害防止対策としてワナを仕掛けますが、ワナを仕掛けるのは山奥ではなく里山周辺、里山への入り口です。


村では山からの鳥獣の侵入を防ぐために、サクが設置されていますが、サクの下に穴を作ったり、サクを超えたりして侵入してきます。

   
獣道にはシカの足跡や動物のフン貯めがあります。
獣の足跡は一直線に里の畑に向かっています。

 
左の前足がワナに引っかかるように設置するという高度な技
ホリさんは15か所くらいワナを設置して、毎日のように見回りをします。

 
鹿は枝を踏むと音がするので、枝を避けて歩くそうです。その習性を利用してワナを仕掛けます。
箱ワナ(檻)はイノシシ用ですが、イノシシはなかなか捕まりません。

  
山の恵みでもある動物の命をいただくので、村の鎮守様に手を合わせます。
里山や村に入るときは、猟友会のベストと帽子を必ず装着し見回り
不審者でないことが一目瞭然です。

 
いただいた命は、きちんとありがたく食べます。
奥さんのカズミンはとっても料理上手。やわらかくておいしいジビエ料理をご馳走になりました。
狩猟した獣のお肉は売買はできないので、知人で分けたり冷凍保存したりして無駄にしません。
獣がワナにかかるとホリさん宅では、いつも奥さんお子さんと家族総出で解体しています。
今回は残念ながら、ワナに獣はかかっていなかったので解体作業はできませんでしたが、ぜひ次回は経験したいと思いました。

狩猟というとダークなイメージがありますが、有害鳥獣対策や生態系の保全にも貢献するものです。
人間が生きていくために食べ物を手に入れるという、おそらく遺伝子レベルの本能みたいなものも自分の中で不思議と感じることができました。
今回、「里山と獣」「山と食」について、とても良い勉強ができました。堀金家の皆さん、ありがとうございました。