【山ナース日記】vol. 82 赤岳鉱泉GW山岳医療ボランティア活動①「塹壕足(ざんごうあし)」

山ナース

2021年GWの6日間、南八ヶ岳の赤岳鉱泉で山岳医療ボランティアをしてきました。
その間に南八ヶ岳では2回も遭難事故がありましたが、赤岳鉱泉では悪天候の予報の影響もあり宿泊者も少なく、落ち着いたGWでした。
そんなGW山岳医療ボランティアの模様は3回に分けて報告したいと思います。

先ず初回はGW中の登山者で「装備不良」が目立ったことについてです。
この時期、難しいのが靴の選択ですが、下界は温かくなっていても山はまだ残雪期です。
しかし、ウォーキングシューズ(いわゆる運動靴)の登山者が多く見受けられました。
私は不安定な天気の中を入山しましたが、雪が降ったり雨になったり、雪が溶けてベチョベチョになったり凍っていたりと、足元は常に一定ではありません。

GWはじめ↓

GW真っ只中↓

上の2枚の写真のように、数日で環境は変わってしまうのでハイキング気分で山に行くと痛い目にあいます。

そして、今回の赤岳鉱泉への登山道のような氷点下でなくても起きるのが、「塹壕足(ざんごうあし)(トレンチフット)」です。
低温で足が凍る凍傷とは異なりますが、寒冷・湿潤に足を長時間さらされた足は、血液循環が悪くなり腫れて冷たくなる。
その結果、壊死や感染を引き起こすと切断しなくてはならなくなる。
 

戦争で兵隊が戦うための塹壕(穴を掘って身を隠す)で多く発生したために、その名が付けられたそうです。
昔々の話ではなく、近年では野外フェスなどのイベント中に、足が寒く湿った泥だらけの状態で長く続いて塹壕足になったという報告もあります。
「たかが靴」と侮るなかれ、塹壕足は足を清潔に、温かく、乾燥した状態に保つことだけで防げるので「されど靴」なのです。

そして、間違ったアイゼンや装備不良も危険です。
GW後半に稜線上でアイゼンが両足とも壊れて、直している最中にバランスを崩して沢に滑落するという遭難事故がありました。
6本爪や簡素なアイゼンで稜線に上がろうとする登山者も見受けられました。
登山者と山の接点である足元には十分ご注意いただきたいと思います。


低気圧が抜けて八ヶ岳を覆っていた雲が晴れた日暮れ時に、こんな幻想的な夕焼けを見ることができました。

山は素晴らしい景色を与えてくれるとともに自然の厳しさも与えます。

次回の赤岳鉱泉GW山岳医療ボランティア活動②は「気象遭難」です。お楽しみにホームページをチェックしていて下さいね。