【山遊び♪レポ】八峰キレットで恐ろしい決断!? ~扇沢→親不知をテント泊ソロ縦走なるか!?~

山ナース

投稿時期:2023年9月
投稿者:ホームページ管理人Mu

こんにちは!ホームページ管理担当者のMuです。
今回の投稿は、鹿島槍ヶ岳登頂後、いよいよ今回の縦走前半での核心部「八峰キレットの通過」です。
山と高原地図の一部を表示すると↓になります。

↑の地図上の左下にある鹿島槍ヶ岳から進みます。
ちなみに鹿島槍ヶ岳までの投稿は↓をご覧ください。(クリックすると移動します)
【山遊び♪レポ】人生最後じゃなかった?テント泊ソロ長距離縦走 ~扇沢→親不知をテント泊ソロ縦走なるか!?~ – 小林美智子山岳看護師事務所(山ナースガイドオフィス) 
【山遊び♪レポ】ゴタテの空白を埋める縦走 ~扇沢→親不知をテント泊ソロ縦走なるか!?~ – 小林美智子山岳看護師事務所(山ナースガイドオフィス)

キレットとは?
キレットって、穂高の大キレットが有名ですが、漢字で「切戸」と書きます。
落差が大きくて、鋭く切れ込んだ難所のことを呼んでいて、ルートの中では難易度の高い場所になります。
ちなみに北アルプスの三大キレットと言えば「大キレット」「不帰(かえらず)キレット」そして「八峰キレット」になり、私は今回で全てを歩いたことになります。

展望が回復
鹿島槍ヶ岳を越えて激下りで標高が一気に下がると、またガスの中から脱出して視界が開けます。
まず、気になるのは前回の投稿の最後に書いたように、鹿島槍ヶ岳の北壁です。

これは、横から見ても急角度なのがハッキリと分かり、今から登るわけでもないのに、見ただけで心臓がドキドキしてきます。
本当に壁!・・・で、ここを雪が有る時に登るのだから・・・
まだまだ修行が必要ですね。。。

さて、では目線をこの先の五竜岳の方に向けます。

まず、「ド~ン!」と大きな岩の山(上の写真の一番奥)があるので、あれが五竜岳だと分かります。

「けっこー、遠いな・・・」と思ってしまう。
でも登山の経験を重ねてくると、実際には「そんな遠くない」という事は頭では分かってくるんです。

まずは「キレット小屋(上の写真の右下に赤い屋根が見えています)まで岩場の下りが続くので注意して!」としっかり自分に言い聞かせるようにして歩き出します。
パラパラと、たま~に雨が降っているので、登りではあまり気にならなかったのですが、下りでは濡れた岩の上に無造作に足を置くと滑ることがあって、集中力を高めた状態を維持していないと滑落しそうな岩場で、気を緩める瞬間が無くなってきました。
たまに少しブレイクして、景色を眺めては気を緩めメリハリをつけることを意識しました。
例年なら登山道近くに残雪がある場所もあるはずなのに、下の方にしか雪渓はありません。

水が無い時も補給は難しそうですね。
大きな氷河が有るので剱岳だと分かりますが、山頂はやはりガスの中・・・

八峰キレット通過
八峰キレットというと下の写真の付近を通過する映像をよく見たので「こんな感じの区間が続くのかなぁ~」と漠然とイメージしていたのですが、このような岩場に草が生えた“画になる!?”区間はほんの一部で、実際には手をたま~に使う岩場のアップダウンが長いです。

こんなのも↓

あとは、こんな感じ↓

なので、私の感覚(あくまで個人の感想ですが。。。)としては岩が濡れていなければ意外と写真の区間は快適&安心で、岩場のアップダウンはありますが、激下りよりもスムーズに通過できると思いました。
むしろ短くて残念に感じました。
画になる区間からは10分ほどでキレット小屋に到着します。

小屋の直前で急激に下りるのでうんざりとしましたが「こういう時が要注意だ!」と気合を入れ直しました。

決断の時
キレット小屋に到着したのは16時ちょうどでした。外には誰もいません。
小屋の中には小屋番さんらしき人がいます。
ついでに玄関入ってすぐの所にガラスの冷蔵ケースに入った冷たそうな飲み物たちも見えます。
「う~、コーラ・・・飲みたい。」

のですが、皆さんには絶対にして欲しくない決断をしました。
「このまま進み五竜山荘へ向かう」
五竜山荘まではコースタイムで4時間40分なので(3時間以内で着くだろうから)、ギリギリ明るいうちに着ける!という楽観的な考え。
水は、冷池山荘出発時と変わらず100㎖なので、補給せず。
その代わりに、ここでの行動食はゼリー系のアミノバイタルで水分の消費を抑えるように変更しました。
前回の投稿の冷池山荘から先へと出発する際の判断でも書いたのですが、山小屋には遅くとも15時とか16時に着いていないと万が一の際に、暗くなってからではヘリコプターなどを含む救助等の対応が難しくなります。それで手遅れになる場合があるかもしれません。
考慮すると遅くても日が暮れる3時間くらいまでには小屋に到着するようにした方が良いのは間違いありません。
私が16時で先に進むという決断の際に考えたことは、とにかく慎重に歩き転倒や転落をしないことでした。ケガさえしなければ、テントがあるので何とかなる!・・・と。
小林美智子ガイドも、山で先に進むか検討する際に考える事は、天気・体調・時間と言っていますが、今回はテントを持っていたので時間は無視していました。
天気は、風が強くなってきましたが歩くのには支障ない程度で「(パラパラ降る度に)いつ本降りになるか?」と空を見上げてばかりいたのに、重い雲が立ち込めたままなので、大丈夫だろうと思っていました。
そして、体調は万全・・・なにしろ扇沢を歩き出してからまだ6時間しか経っていないのです。もう少し歩かないと時間がもったいないですね。
(繰り返しになりますが、この決断は私自身の今までの経験と自分で把握している体力、そしてリスクをどう考えるか、という事から決断しています。今回は実際の時間を記載していますが、くれぐれも安易に真似をしないようにお願いいたします。)

風が強まり本格的に降ってきた雨に・・・焦る心
長々と先に進むかの判断について書いてしまいましたが、最近の山小屋は予約が当たり前で、時期によってはテント場でも予約が必要な場合があり、天気・体調・時間で自由に縦走を楽しむのには制約が大きくなった気がします。
今回の私の縦走は、出来るだけ自由に判断しています。
というわけで、五竜岳を目指して進みます。

キレット小屋から五竜岳までは、八峰キレットの中でも一番楽しい歩きでした。
基本的には登りですが小さなピークを越えたり巻いたりして、少し下ってという感じで、足が疲労していたら嫌になってしまう感じですが、景色も地形も変化に富んで飽きません。
1箇所、クサリがないと一般の登山者には登るのが大変なのでは?という区間もありましたが、それも謎解きのように考えながら登るので楽しいです。
が、風が強くなってきたので、楽しいと思う気持ちに水を差し初めます。
下の写真で、雲の流れから強風具合が多少は分かるでしょうか?

展望もそんなに良くないので、歩く事を楽しみながら岩場やガレ・ザレを登っていくと山頂への分岐(五竜岳の山頂は縦走路からわずかに外れています)に着きました。
分岐に着くと『お前には山頂へ寄る気持ちがどれほどあるのかな?』と試すかのように雨が本格的に降ってきました。
ここで山頂に寄らねば、次の機会はいつあるのか分からない『登山も一期一会なんだから!』と山頂へ向かいます!
鹿島槍ヶ岳と同じで標高が上がると、ガスの中に突入してしまい視界が悪くなるので長居しない良い言い訳になって、標識の前で写真だけを撮ってすぐに出発。

計画変更!?
五竜岳から五竜山荘までは歩きやすい登山道でしたが、何しろ先が見えないので「いつになったら小屋に着くのだろう?」と軽~く(ホントに)焦りだしていました。
突風で転落するような危険な区間は越えたので風が強くなってきても焦りはないですが、雨がやむ気配も無くなり、心の弱点を突かれているようで「焦るな、焦るな!」と言い聞かせながら下っていくと見えてきました五竜山荘!

強風+大粒の雨にテントを張ろうなんて気持ちは消し去られて小屋泊へと計画変更!
「予約をしていないが、泊まれますか?」と聞くと「予約なしの追加料金がプラスで、夕食の提供は無理ですがOK」とのことで安堵しました。
扇沢から8時間半ちょうどの18時半の到着です。

明るいうちに無事に安全地帯に到着しましたが、あと2日間で日本海まで到達できるのでしょうか?
次回の【山遊び♪レポ】をお楽しみに~!